SAP システムのサイジング・プロセス
使用する SAP ソリューションを決定したら、SAP ランドスケープをサポートするために必要なホストの台数を求め、ホスト・サーバーの適切なサイズを決定します。
SAP サイジングとは、ビジネス要件をインフラストラクチャー/ハードウェアの要件にマップする細かい作業です (これ自体が 1 つのプロジェクトになることもよくあります)。
SAP サイジングについて
SAP HANA または SAP NetWeaver のテクニカル・アプリケーションのための SAP サイジング方法は、SAP のベンチマーク (SAP 提供の情報や利用者の実経験に基づく情報など) を基に構築されています。
SAP ワークロードの基本単位は、SAP Application Performance Standard (SAPS) です。
SAPS とは、SAP のキャパシティー・プランニングとパフォーマンス・テストの担当者が作るスループットの定義のことです。 例えば、標準的な SAP Sales and Distribution (SAP SD) アプリケーション・ベンチマークでは、100 の SAPS は、1 時間あたり 2,000 の完全に業務処理された注文書明細の項目として定義されます。 この例は、SAP Enterprise Resource Planning (SAP ERP) ソリューションの、1 時間あたり 2,400 の SAP SD トランザクションに相当します。
ベンチマーク・テストでは、CPU の負荷が 100% に近い状態でトランザクションを応答時間 1 秒未満で実行および処理する能力を基準にして、インフラストラクチャーの処理能力を決定して評価します。
プロセッサーの能力は、SAP で認定されている標準的な (SAP SD) ベンチマーク・テストの際に測定されます。 SAP によって認証されたベンチマークテストの詳細については、 SAP 「標準アプリケーションベンチマークと 実用的なガイドラインおよびテクニック」および「 SAP ランドスケープの最適なパフォーマンスとスケーラビリティのためのサイジング」 をご覧ください。
SAP のサイジングの基準になる主なもの
- ビジネスのスループット (スループットに基づくサイジング)。新規オブジェクトのデータベース表のサイズの増加、特定の制限時間 (業務別に決定) 以内にトランザクションまたはバッチ・ジョブ実行を処理するためにかかる CPU 時間など。
- ビジネスの同時ユーザー数 (ユーザーに基づくサイジング)。日常的に行うトランザクションに応じたユーザーの使用パターンや分類など。
- 高可用性と災害復旧に対するビジネス・ニーズ
- 1 つのランドスケープに統合する複数の SAP アプリケーションとアドオンに対するビジネス・ニーズ。
SAP のサイジングによって決定されるもの
- アプリケーションサーバーの構造と設定の設計サポート:
- SAP システム
- SAP 階層化/トラック
- SAP インスタンス
- SAP クライアント
- データベースサーバーの構造と構成の設計サポート:
- システム・タイプ。分散型など
- デプロイメント・タイプ。MDC など
- 処理タイプ。OLAP など
- サイジング・タイプとデプロイメント方式。TDIv5/6 によるエキスパート・サイジングなど
- 高可用性と災害復旧
- プロセッサーとメモリーの要件
- ストレージ要件
- ネットワークの要件とトポロジー
- バックアップの方法
SAP の不正確なサイジングによって SAP の実装プロジェクトにリスクが生じる可能性がある
不正確な SAP サイジングがプロジェクトに与えるリスク | SAP サイジングの不正確さを軽減する方法 |
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入力データが完全/十分でない |
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仮定データが検証されていない | /n - 前提条件は文書化され、プロジェクト計画に検証プロセスを含める必要がある |
カスタム・コードおよび特殊なデータ構造 | /n - 予測が困難なシナリオは、カスタムコードと特別なデータ構造によって解決されますが、インフラ(通常は処理とストレージ)に影響があるかどうかを判断するための検証プロセスが必要です |
SAP の論理構造および SAP のサイジングがインフラストラクチャーに与える影響
SAP の論理構造および SAP のサイジング作業は、複数の点でインフラストラクチャー関連の要件に影響を与える可能性があります。3 つの主な点について以下に説明します。
- ビジネス要件
ビジネス要件 (例えば、 99.99% のアップタイムや年に 3 回のダウンタイム時間枠など) は、SAP ランドスケープの論理的な設計と構造に影響を与えます。 論理構造は以下のもので構成されます。
- SAP システム
- SAP 階層化
- SAP トラック
- SAP インスタンス
- SAP クライアント
- SAP サイズ結果
論理構造の決定はどれも SAP サイジングのプロジェクト/取り組みの結果に反映されます。
- 必要な SAPS ベンチマークしきい値
- データベースのサイズ (メモリーおよびディスク・ストレージ)
- その他
- インフラ要件
SAP サイジングの結果は、以下のように、インフラストラクチャーのニーズに大きく影響します。
- 必要なホスト数
- 必要なホストの性能/サイズ
- ホストのストレージ容量
- ホスト間のネットワーキングの性能と分離
- その他
既存の SAP システムのマイグレーション
既存の SAP システムを (いずれかのソースから) IBM Cloud 環境にマイグレーションする場合は、その現在の環境の SAPS 数から SAPS 数を決定できます。
現在の作業負荷(使用CPUおよびRAM)に関する情報を使用し、既存のハードウェア の SAP SDベンチマーク結果から、使用CPUのSAPS相当値を入手します。
SAP Quick Sizer の使用
SAP Quick Sizer は、 SAP が提供するウェブベースのツールです。 SAP のすべての顧客およびビジネスパートナーが利用できます。 サイジング情報をこのツールに直接入力します。 このツールは、SAP HANA サーバーまたは SAP NetWeaver サーバーのサイズを決定します。
Quick Sizer を使用するには、SAP S ユーザー ID が必要です。
Quick Sizer は、ワークロードを (SAPS という単位で) 計算し、適切なプロセッサー使用率になるようにワークロードを調整します。 そのため、SAP SD ベンチマークのトランザクションを 1 時間あたり 4,800 件処理するワークロードが必要な場合、このツールはそのワークロードを 200 SAPS と計算します。 例えば、IT 部門が、ピーク使用時のシステムの過負荷を回避するために、ターゲット・プロセッサーの許容負荷を 33% に決定したとします。 負荷 33% で 200 SAPS を処理できるプロセッサーは、負荷 100% で 600 SAPS を処理できるプロセッサーということになります。 したがって、600 SAPS を処理できるシステムが、新規インフラストラクチャーが準拠する必要のあるベンチマークとなります。
保守的なサイジング方式と見なされるかもしれませんが、サーバーの SAPS の計算はすべて、特定の SAP SD ワークロードだけを実行する、高度にチューニングされた SAP システムを基にしていることに留意してください。 システム内の SAP アプリケーションのタイプ、カスタム構成、またはカスタム・コーディングによっては、結果が異なる場合があります。 また、PoC (概念検証) やパフォーマンスと応答時間に関してなど、プロジェクトの要件が異なる場合があります。
SAP アプリケーションを決定し、SAPS 数を SAP の Quick Sizer で計算するか現在のランドスケープに基づいて決定したら、IBM Cloud® for SAP ポートフォリオから、また、さまざまなインフラストラクチャーのサイズから選択することができます (サイズをプロファイルとして選択できる場合もあれば、サイズがカスタマイズ可能/フレキシブルである場合もあります)。
SAP の Quick Sizer を使用した SAP HANA の評価
SAP HANA は、単一ノードおよびマルチノードの SAP HANA 認定サーバーの実稼働環境でサポートされます。 SAP HANA データベースは、一部の表およびフィールドに列型ストレージを使用するので、従来のリレーション・データベース管理システム (RDMS) の行型ストレージよりストレージ量が削減されます。データを高度に圧縮可能であり、圧縮率は 3:1 から 10:1 を超える範囲になります (元のデータとデータベースによります)。
SAP HANA を正しくサイジングすることは、プロジェクトの成功にとって鍵となります。 ベスト・プラクティスとしては、IBM Cloud® for SAP に SAP HANA 認定サーバーを注文する前にサイジングを完了してください。 メモリーのサイズやストレージ要件の見積もりが間違っていると、さらに大きなサーバーへのアップグレードやマイグレーションが必要になる可能性があります。
SAP HANA 認定アプライアンスのサイジングの検討で最も重要になるリソースの 1 つがメイン・メモリーです。
SAP HANA マスターガイドは、サイズ関連トピックの出発点となります。
サイズの決定 SAP HANA- SAP HANA マスターガイド内の情報は、 SAP HANA システムのサイズ決定方法についてのガイダンスを提供しています。 新規インストールと既存システムのマイグレーションの両方に関連する、さまざまなシナリオが取り上げられています。
その情報には、SAP HANA 版の SAP Quick Sizer ツールへのリンクがあります (ツールを使用するには SAP S ユーザー ID が必要です)。 また、そのページには SAP HANA サーバーのサイジングに関連した SAP Note のリストも記載されています。
SAP サイジングについての詳細情報
サイジングについて詳しくは、以下のリソースを参照してください。
- サイズ SAP HANA- SAP HANA マスターガイド
- クイックサイザー
- SAP 注1736976 - BW-on-HANAのサイジングレポート
- SAP 注1872170 - HANAのスイートメモリーサイズ
- SAP 注1793345 - Suite on HANAのサイズ指定 SAP
- SAP 注1514966 - : サイズ SAP HANA SAP HANA
- SAP 認定およびサポート対象 ハードウェア SAP HANA
- SAP 注2055470 - の電源計画とインストールに関する詳細 - セントラルノート SAP HANA
- SAP HANA ストレージ要件
- SAP エンタープライズストレージハードウェアの認定取得済み SAP HANA
SAP アプリケーションがサイジングに与える影響
基本的に、SAP アプリケーションをサイジングするときには、インフラストラクチャー、OS、データベース・サーバー、およびアプリケーション・サーバーに関連する設計上の考慮事項があります。 それらについて、『SAP ワークロードのサイジングと計画』のトピック・グループで説明しています。
- ネットワーキングの設計上の考慮事項
- ストレージの設計上の考慮事項
- コンピュートおよび OS の設計上の考慮事項
- SAP HANA データベースの設計上の考慮事項
- SAP NetWeaver の設計上の考慮事項
ただし、SAP ビジネス・アプリケーションおよび SAP テクニカル・アプリケーションごとに、実装のための設計上の考慮事項は異なります。つまり、考慮事項はビジネスごと、シナリオごとに変わります。
『SAP ワークロードのサイジングと計画』のトピック・グループに加えて、SAP の実装に関する詳しい情報や考慮事項を個々に記載したトピック・グループがあります。
-
SAP ビジネス・アプリケーション
-
SAP AnyDB データベース